五月のある晴れた午後、洗濯物を干そうとベランダに出た私は、軒下の隅にある奇妙な物体に目を奪われました。それはゴルフボールを一回り小さくしたような、灰色をしたデコボコとした塊でした。よく見ると、そこには細長い脚を持った一匹の大きな蜂がしがみつくようにして、懸命に何かを塗り付けているようでした。それがアシナガバチの初期の巣であると気づいた瞬間、背筋に冷たいものが走りました。まだ巣は作り始めで、蜂も一匹しかいないようでしたが、放っておけば夏には何十匹もの蜂が飛び交うことになるという恐怖が脳裏をよぎりました。私はすぐにインターネットで情報を集め、働き蜂がいない今の時期なら自分でも落とせると知りました。しかし、いざ実行するとなると足がすくみます。ホームセンターへ走り、最も噴射距離が長いと謳われているハチ専用スプレーを購入しました。店員さんからは、夜に作業するのが一番安全だとアドバイスをもらいました。日が落ちて周囲が静まり返った頃、私は厚手のパーカーのフードを深く被り、軍手を二重にはめてベランダへ向かいました。懐中電灯を直接向けないように細心の注意を払いながら、昼間に確認した巣の場所を特定しました。女王蜂は巣にぴったりと寄り添い、眠っているかのように動かずにいました。心臓の鼓動が激しくなるのを感じながら、私はスプレーのノズルを向け、一気にトリガーを引きました。真っ白な薬剤が夜の闇を切り裂き、巣を包み込みました。蜂は羽音を立てる間もなく地面へ落下し、私は安堵のあまりその場にへたり込んでしまいました。翌朝、明るくなってから確認すると、地面には小さな巣の残骸と動かなくなった蜂が転まっていました。箒とチリトリを使って慎重に回収し、念のために巣があった場所にスプレーをもう一度吹き付けておきました。たった一匹のハチを相手にするだけのことでしたが、自分自身の平穏な生活を守るために、勇気を出して初期のうちに対処して本当に良かったと感じています。それ以来、私は毎朝ベランダの隅々までチェックする習慣がつきましたが、あの時の決断があったからこそ、今は安心して窓を開けることができています。