私の体験談をお話しします。それは数年前の秋、しばらく乗っていなかった古い軽トラックの荷台を整理しようとした時のことでした。荷台に被せていた厚手のシートを何気なく持ち上げた瞬間、そこから数匹の黄色いハチが飛び出し、私の顔の周りを威嚇するように飛び回ったのです。驚いて後ろに飛び退きましたが、シートの隙間を恐る恐る覗き込むと、そこにはサッカーボールほどの大きさになったキイロスズメバチの巣が、荷台の隅にしっかりと固着していました。キイロスズメバチは軒下や屋根裏に巣を作るものだという先入観がありましたが、まさか車の一部にこれほど大きな要塞が築かれているとは夢にも思いませんでした。後で調べたところ、彼らは雨風が凌げて、かつ天敵である鳥や大型の昆虫に見つかりにくい場所であれば、場所を選ばずに営巣を開始するのだそうです。特に、長期間動かしていない車両や、庭に放置された古タイヤ、あるいはエアコンの室外機の内部などは、彼らにとって絶好の不動産となります。私の軽トラックの場合、シートの下という閉鎖的で暖かい空間が、初期の巣作りから巨大化までのプロセスに完璧に合致してしまったのでしょう。駆除業者の方に来てもらった際、業者の男性は「これくらいならまだ可愛い方ですよ」と笑いながら、以前には自動販売機の裏側や、高層ビルの十四階のベランダにある植木鉢の中に作られた巣を駆除したこともあると教えてくれました。キイロスズメバチの恐ろしさは、その攻撃性もさることながら、人間の想像を超えた場所を「我が家」として選ぶ適応力にあります。普段使い慣れている場所であっても、わずかな隙間と静寂があれば、そこは彼らにとってのフロンティアになり得るのです。あの日、私は幸いにも刺されることはありませんでしたが、もし何も知らずにシートを勢いよく剥がしていたら、今頃どうなっていたか想像するだけで背筋が凍ります。それ以来、私は庭の隅々や、滅多に動かさない道具類の周りを確認する際には、まず長い棒で遠くから軽く振動を与え、ハチの飛び出しがないかを確認することを鉄則としています。彼らの巣は、私たちの油断のすぐ隣にあるのだと痛感した出来事でした。