部屋の掃除をしている時、あるいは古い本を手に取った時、白い粉のようなものが微かに動いているのを見たことはないでしょうか。もしそれが動いているのであれば、それは埃ではなく「チャタテムシ」という紙を食べる虫の一種かもしれません。チャタテムシは体長が一ミリメートルにも満たない非常に小さな虫で、一見すると無害そうに思えますが、大量発生した際の精神的な苦痛と実質的な被害は決して無視できません。チャタテムシが紙を食べる虫とされる理由は、彼らが紙の表面に生える微細なカビを主食としていることにあります。湿気の多い部屋で保管されていた本や書類には、肉眼では見えないレベルのカビが発生しており、チャタテムシはそのカビを刈り取るように食べ進めます。その際、紙の繊維自体も一緒に傷つけてしまい、結果として紙の劣化を早めることになります。彼らが好むのは、湿度が六十パーセントを超えるような、空気の淀んだ環境です。特に、新築のマンションなどコンクリートの水分が抜けきっていない建物や、北側の湿気が溜まりやすい部屋にある本棚は、彼らにとっての巨大な繁殖場となり得ます。また、チャタテムシの恐ろしい点は、その驚異的な繁殖スピードです。雌だけで卵を産むことができる種も多く、条件さえ揃えば短期間で数千、数万という単位に増殖します。本棚の隙間に白い粉が積もったようになり、それが一斉に動き出す光景は、心理的にも大きなダメージを与えます。さらに、チャタテムシの死骸や糞はハウスダストの成分となり、喘息やアレルギー性鼻炎の原因になることも指摘されています。このように、紙への被害に留まらず、住む人の健康にまで影響を及ぼすのが、チャタテムシという害虫の正体です。駆除と予防の基本は、徹底した除湿と換気です。除湿機を使用して湿度を五十パーセント以下に保つことができれば、チャタテムシは生き延びることができず、自然にその数は減少します。また、彼らの餌となるカビを発生させないために、アルコール除菌剤で本棚や床を定期的に拭き掃除することも極めて有効です。紙を食べる虫の中でも、チャタテムシは住環境の衛生状態を映し出す鏡のような存在です。彼らの姿を一度でも見かけたら、それは部屋の湿度が高すぎることへの警告であると受け止め、抜本的な環境改善に着手することが、大切な紙資料を守るための唯一の解決策なのです。
湿気とカビが招くチャタテムシの大量発生と紙製品への被害