キッチンでゴマ粒のようなシバンムシを一匹でも発見したならば、それはもはや「様子を見る」という段階ではありません。その一匹は、あなたの家のキッチンや食品庫のどこかに隠された「発生源(巣)」からやってきた、斥候部隊の一員です。この見えない本拠地を特定し、根絶やしにしない限り、彼らの侵略は決して終わりません。ここでは、プロの害虫駆除業者の視点で、シバンムシの発生源を突き止めるための、徹底的な捜索マニュアルを解説します。まず、捜索を開始する前に、心に留めておくべきは、シバンムシの幼虫が好むのは「乾燥した植物質のデンプン」であるということです。このキーワードを頼りに、怪しい場所をリストアップしていきましょう。最重要捜索エリアは、言うまでもなく「常温保存の乾燥食品」です。特に、以下のものを重点的にチェックしてください。第一に、「小麦粉、片栗粉、パン粉、お好み焼き粉、ホットケーキミックス」といった粉製品。袋をよく見て、針で刺したような小さな穴が開いていないか、袋を軽く振ってみて、中で虫が動く気配がないかを確認します。第二に、「パスタ、マカロニ、素麺、うどん」といった乾麺類。これも、袋に穴がないか、麺が不自然に砕けて粉っぽくなっていないかをチェックします。第三に、「香辛料」。ローリエや唐辛子、ハーブ類など、乾燥させた植物は、彼らにとって格好の餌場となります。瓶の蓋をあけて、中を確認しましょう。第四に、見落としがちなのが「ペットフード」です。ドッグフードやキャットフード、あるいは鳥の餌なども、シバンムシの大好物です。そして、捜索は食品だけに留まりません。キッチン周辺の「畳」や、壁に飾ってある「ドライフラワー」、あるいは漢方薬なども、重要な発生源となり得ます。発生源を特定できたら、次に取るべき行動は一つ。汚染された食品は、もったいないという気持ちを抑え、すぐにビニール袋に入れて口を固く縛り、廃棄することです。そして、虫がいた棚や容器は、掃除機で隅々まで吸い取り、その後、消毒用エタノールなどで丁寧に拭き上げます。この「捜索」「廃棄」「清掃」という三つのステップを徹底して初めて、シバンム-の繁殖の連鎖を断ち切ることができるのです。