インターネットなどで、時に話題となる「白いゴキブリ」。その神々しくも見える姿から、「幸運の兆し」などと噂されることもありますが、その正体は、決して縁起の良いものではありません。実は、この白いゴキブリと、私たちが目にする「赤いゴキブリ」には、非常に密接な関係があります。それは、彼らの「脱皮」という成長過程において、時間と共に変化していく姿なのです。ゴキブリは、幼虫から成虫になるまでに、何度も脱皮を繰り返します。脱皮とは、成長して窮屈になった古い外骨格を脱ぎ捨て、一回り大きな新しい体になるための、彼らにとっての重要な生命活動です。そして、脱皮した直後のゴキブリは、まだ新しい外骨格が柔らかく、色素も沈着していないため、乳白色、あるいは透明感のある白い色をしています。これが、白いゴキブリの正体です。この状態のゴキブリは、外敵に対して非常に無防備であるため、通常は、壁の裏や家具の隙間といった、絶対に安全な隠れ家の中で、ひっそりと脱皮を行います。そのため、私たちがその姿を目撃する機会は、極めて稀なのです。そして、脱皮を終えたゴキブリは、数時間かけて、新しい外骨格を空気を取り込んで膨らませ、乾燥させて硬化させていきます。この硬化の過程で、徐々に色素が沈着し、体色が変化していきます。この時、完全に黒くなる前の、まだ色が定着しきっていない段階の個体が、まさに「赤茶色」、つまり私たちが「赤いゴキブリ」と認識する姿なのです。つまり、白いゴキブリ→赤いゴキブリ→黒いゴキブリ、という流れは、一連の成長と硬化のプロセスを示しているわけです。したがって、もしあなたが家の中で、脱皮直後の白いゴキブリや、まだ赤みがかったゴキブリに遭遇したとしたら、それは極めて重要な意味を持ちます。それは、彼らが、わざわざ屋外の危険な場所ではなく、あなたの家の中を「安心して脱皮ができる安全な隠れ家」、すなわち「巣」として認識し、定住しているという、紛れもない証拠なのです。幸運の兆しどころか、それは、あなたの家が彼らの繁殖拠点となっていることを示す、最も確実で、そして最も「やばい」サインと言えるでしょう。
脱皮直後の白いゴキブリと赤いゴキブリの関係