ゴキブリとの戦いにおいて、最も効果的で、そして最も平和的な解決策は、そもそも「卵を産ませない」ことです。ゴキブリが「この家は、子育てには向かない」と感じるような、彼らにとって魅力のない環境を作り上げることが、長期的なゴキブリ対策の根幹となります。そのための予防策は、ゴキブリの生存に必要な「餌」「水」「隠れ家」という三つの要素を、家の中から徹底的に排除することに尽きます。まず、「餌」を断つことです。ゴキブリは驚くほど雑食性で、人間の食べかすはもちろん、油汚れ、髪の毛、ペットフード、本の糊まで、あらゆるものを餌にします。キッチンでは、調理後や食後の清掃を徹底し、食べかすや油汚れを残さないようにしましょう。シンクに洗い物を溜めておくのは厳禁です。食材は、必ず密閉容器に入れて保管し、特に小麦粉や砂糖、乾物などの粉類は、袋のまま放置しないようにします。生ゴミは、蓋付きのゴミ箱に入れ、こまめに処分することが大切です。次に、「水」を断つことです。ゴキブリは、水一滴あれば数週間生き延びることができると言われています。キッチンのシンク周りや、浴室、洗面台を使った後は、水滴をきれいに拭き取る習慣をつけましょう。ペットの水飲み皿を、夜間は片付けておくのも有効です。そして、「隠れ家」と「産卵場所」をなくすことです。ゴキブリは、暖かく、暗く、狭い場所を好みます。冷蔵庫やコンロの裏、電子レンジの下などは、定期的に動かして掃除し、彼らの巣となり得るホコリやゴミを取り除きます。そして、前述の通り、不要な段ボールは、家に溜め込まないことが鉄則です。届いた荷物はすぐに開封し、段ボールは速やかに処分しましょう。これらの地道な清掃と整理整頓の積み重ねが、ゴキブリにとっての「住みにくい家」を作り上げ、産卵という最悪の事態を防ぐための、最も強力なバリアとなるのです。