家の中で、不快な「細長い虫」に遭遇してしまった時、恐怖と混乱で、多くの人が「とにかく早く退治したい」という一心で、手元のスリッパや殺虫剤に手を伸ばします。しかし、その一撃を下す前に、一瞬だけ立ち止まり、相手の正体を冷静に見極めることが、実は非常に重要です。なぜなら、その対処法が、相手によっては全く効果がなかったり、あるいは、かえって危険な状況を招いたりする可能性があるからです。まず、相手が銀色の「シミ(紙魚)」や、赤褐色の「シバンムシ」であった場合。これらは、人間に対して直接的な危害を加えることはありません。彼らの罪は、私たちの財産(本や食品)を損なうことです。殺虫スプレーは有効ですが、食品の近くでは使いにくいでしょう。彼らの場合は、目の前の一匹を退治することよりも、発生源を特定し、汚染されたものを廃棄し、保管環境を改善するという、根本的な対策の方がはるかに重要です。次に、相手が電光石火の速さで動く「ゲジ(ゲジゲジ)」であった場合。思い出してください、彼はゴキブリなどを食べる「益虫」です。もし、その見た目に耐えられるのであれば、そっと見逃してあげるのが、家の生態系にとっては最善の選択かもしれません。しかし、どうしても共存できない場合は、殺虫スプレーで駆除しても構いません。そして、最も注意が必要なのが、平たくて脚が短く、ウネウネと進む「ムカデ」であった場合。これは緊急事態です。殺虫剤は有効ですが、中途半端な攻撃は、彼らの猛烈な反撃を誘発します。数秒間、集中的に噴射し続け、完全に動きを止める必要があります。熱湯をかけるのが、より確実で安全な方法です。絶対に素手で触ったり、叩き潰そうとしたりしてはいけません。このように、相手の正体によって、とるべき行動は大きく異なります。まずは深呼吸をして距離を保ち、相手をよく観察し、適切な武器を選択する。その冷静な判断力こそが、この不快な遭遇戦を、最も安全かつスマートに終結させるための、最大の鍵となるのです。
その細長い虫、殺していい?種類別の正しい対処法