バルサンを使用する際、人間だけでなく、共に暮らすペットの安全を確保することは、飼い主としての絶対的な責任です。特に、指定時間より長く放置してしまった場合は、室内に残留する殺虫成分の濃度が高くなっている可能性があるため、より一層、慎重な対応が求められます。バルサンの主成分であるピレスロイド系殺虫剤は、人間や犬、猫といった哺乳類に対しては、体内で速やかに分解・排出されるため、比較的安全性が高いとされています。しかし、それはあくまで適切な使用法と、換気を徹底した上での話です。体が小さく、床に近い場所で生活するペットは、大人よりも薬剤の影響を受けやすいと考えられています。バルサン使用後は、ペットを部屋に戻す前に、必ず規定時間以上の徹底的な換気を行ってください。長時間放置した場合は、1時間以上、窓を全開にして空気を完全に入れ替えるのが安心です。そして、最も重要なのが、床の拭き掃除です。床に落下・付着した殺虫成分の粒子を、ペットが舐めてしまったり、足の裏に付着したものを毛づくろいの際に口にしてしまったりするのを防ぐためです。水拭きで、床全体を丁寧に拭き上げましょう。ペットが普段使っているベッドやクッション、おもちゃなども、一度洗濯するか、固く絞った布で拭いておくと万全です。一方で、魚類(観賞魚)、両生類(カエルなど)、爬虫類(トカゲなど)、そして昆虫(カブトムシなど)は、ピレスロイド系殺虫剤に対して非常に感受性が高く、微量でも死に至る危険性があります。これらのペットは、バルサン使用前に、必ず水槽やケージごと、完全に家の外へ避難させなければなりません。水槽をビニールで覆うだけでは不十分です。長時間放置してしまった場合は、空気中に溶け込む薬剤の量も増えるため、そのリスクはさらに高まります。もし、バルサン使用後にペットの様子(元気がない、嘔吐、痙攣など)に少しでも異変が見られた場合は、すぐに動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰いでください。