もし、あなたが家の中で、見慣れない「赤いゴキブリ」に遭遇したとしたら、それは、ただ一匹の虫が出たという単純な話ではありません。その一匹の存在は、あなたの家が直面している問題の深刻度を、静かに、しかし明確に物語っています。結論から言えば、赤いゴキブリ、すなわちクロゴキブリの幼虫の発見は、「あなたの家のどこかに、すでにゴキブリの巣が存在し、そこで繁殖活動が活発に行われている」という、極めて確度の高い証拠なのです。なぜ、そう断言できるのでしょうか。その理由は、幼虫の行動範囲にあります。成虫のクロゴキブリは、羽を使って長距離を飛行することも可能で、餌を求めて屋外から家の中に侵入してくるケースも少なくありません。そのため、成虫を一匹見つけただけでは、それが外部からの侵入者なのか、家の中で生まれた個体なのかを、即座に判断することは困難です。しかし、幼虫には羽がありません。彼らの移動能力は、成虫に比べて著しく低く、その行動範囲は、自らが生まれた巣の周辺に限定されます。つまり、リビングやキッチンで幼虫を発見したということは、そのすぐ近く、例えば壁の裏や、床下、あるいは冷蔵庫の裏といった、安全で暖かい場所に、彼らの本拠地である「巣」が確実に存在し、そこから餌を探しに出てきた、と考えるのが最も自然なのです。さらに言えば、ゴキブリは一度に数十個の卵を産みます。あなたが目撃したその一匹の幼虫には、必ず、まだ人目についていない、多くの兄弟たちがいるはずです。そして、その兄弟たちを生んだ親ゴキブリも、当然、その巣の周辺に潜んでいます。赤いゴキブリの発見は、氷山の一角です。水面下では、すでに巨大なコロニーが形成され、あなたの家を拠点として、着々とその勢力を拡大しているのです。この警告を無視し、目の前の一匹を退治しただけで安心してしまうことは、火事の火種を放置するのと同じ、極めて危険な行為です。これを機に、家全体を対象とした、ベイト剤(毒餌)による巣の根絶や、侵入経路の封鎖といった、本格的な駆除・予防対策へと、直ちに舵を切る必要があります。
赤いゴキブリを発見!それは家が巣になっているサイン