ゴキブリという、人々の恐怖と嫌悪の対象である虫には、その生態について、多くの迷信や都市伝説が語り継がれています。特に、その驚異的な繁殖力の象徴である「卵」に関しては、真偽不明の情報が少なくありません。ここでは、ゴキブリの卵に関する、よくある迷信と、その科学的な真実について解説します。迷信1:「ゴキブリは、死ぬ間際に卵を撒き散らす」これは、最も有名な迷信の一つですが、半分正解で、半分間違いです。クロゴキブリのように、卵鞘を産み付けた後は放置するタイプのゴキブリは、このような行動はとりません。しかし、チャバネゴキブリのメスは、孵化直前まで卵鞘をお尻につけています。このメスを、殺虫スプレーなどで攻撃すると、死の危機を感じて、卵鞘を体から切り離すことがあります。これが「卵を撒き散らす」ように見えるのです。卵鞘自体に殺虫剤は効きにくいため、結果として、親は死んでも卵は生き残り、後日孵化するという事態が起こり得ます。迷信2:「一匹いたら百匹いる、というのは卵のことだ」これも、少しニュアンスが違います。「一匹いたら百匹いる」という言葉は、ゴキブリの繁殖力の高さを警告する警句ですが、直接的に卵の数を指しているわけではありません。ゴキブリは集団で生活する習性があり、一匹を発見したということは、その家のどこかに、他の成虫や幼虫、そして複数の卵鞘が隠れている可能性が非常に高い、という意味です。一つの卵鞘からは数十匹しか生まれませんが、複数のメスが次々と産卵することで、その数はネズミ算式に増えていくのです。迷信3:「ゴキブリの卵は、電子レンジで加熱しても死なない」これは、完全に間違いです。ゴキブリの卵も、他の生物の卵と同じく、タンパク質でできています。電子レンジのマイクロ波によって加熱されれば、中の水分が沸騰し、確実に死滅します。ただし、食品を扱う電子レンジの中で、雑菌の塊であるゴキブリを加熱するなど、衛生的にあり得ない行為です。正しい知識を持つことは、ゴキブリへの過剰な恐怖を和らげ、冷静で効果的な対策を立てるための助けとなります。
ゴキブリの卵に関する迷信と真実