ある日の夜、部屋の隅で、見慣れた黒いゴキブリとは明らかに違う、赤茶色をした不審な虫に遭遇したとします。その瞬間、多くの人が「新種のやばいゴキブリか?」「毒でもあるのだろうか?」と、未知の存在に対する恐怖と不安に襲われることでしょう。家の中で発見される「赤いゴキブリ」の正体として、最も可能性が高いのは、実はクロゴキブリの「幼虫」あるいは「脱皮直後の成虫」です。特に、クロゴキブリの幼虫は、成虫とは異なり、光沢のある赤茶色から濃い茶色をしており、背中に黄白色の斑点模様があるのが特徴です。また、どんな種類のゴキブリも、脱皮した直後は、外骨格がまだ柔らかく、色素も定着していないため、白っぽく、やがて赤みを帯びた色に見えます。この状態の個体は非常にデリケートで、通常は人目につかない場所で脱皮を行いますが、何らかの理由で私たちの前に姿を現すことがあるのです。では、この赤いゴキブリの「やばい」レベルは、一体どの程度なのでしょうか。毒性という点では、クロゴキブリの幼虫も成虫も、人間に直接的な毒を持っているわけではありません。しかし、その存在が示す意味合いにおいては、通常の黒い成虫を発見するよりも、はるかに「やばい」状況であると言わざるを得ません。なぜなら、幼虫がいるということは、「あなたの家が、すでにゴキブリの繁殖場所、つまり巣になっている」という動かぬ証拠だからです。成虫が一匹、外部から迷い込んできたのとは、問題の深刻度が全く異なります。その一匹の幼虫の背後には、まだ孵化していない卵や、他の兄弟たちが、壁の裏や家具の隙間といった安全な巣の中で、確実に潜んでいると考えなければなりません。赤いゴキブリの発見は、水面下で静かに、しかし着実に進行していたゴキブリの侵略が、ついに目に見える形で現れ始めた、極めて危険なサインなのです。その一匹を退治して安心するのではなく、これを機に、家全体を対象とした、根本的な駆除と予防策へと踏み出すことが、被害の拡大を食い止めるための、唯一にして絶対の選択肢となります。
家に現れた赤いゴキブリ、その正体と警戒レベル